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Qual è il segreto di papà?

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"Qual è il segreto di papà? "
『おとうさんのひみつは?』(仮題)
Autore: Francesca Pardi(フランチェスカ・パルディ)
Illustratrice: Desideria Guicciardini
Lo Stampatello 2011, 28pp
ISBN: 978-8890579936

 カルロとジュリアのお父さんとお母さんは別れ、お父さんは家を出ていった。2週間に一度、お父さんの家に行って、一緒に遊んだり、料理をしたりして、楽しく週末を過ごすようになる。
 1年後、お母さんの新しいパートナー、アレがやってきて、カルロたちと一緒に暮らすようになった。アレはけっして怒鳴ったりせず、お母さんも幸せそうで、ふたりはアレのことが好きになった。
 一方、お父さんはあいかわらずひとりだった。カルロたちがいるときにときどきみょうな電話がかかってくることがあったが、ふたりに聞かれないようにほかの部屋に行ってしまい、だれからの電話なのか教えてくれず、どこか怪しげ。ふたりはいろいろと想像していたが、ある日、お父さんのひみつを知らされる。
 別れたお父さんの新しいパートナーが男性だと知って、6歳のジュリアは単純に喜ぶが、9歳のカルロは複雑な気持ちになる。男の子たちのあいだで、〈ゲイ〉という言葉は悪口として使われていたからだ。そこで、偏見をなんとかしようと、お父さんはカルロの担任の先生に相談する。先生がクラスのみんなに〈ゲイ〉という言葉の本当の意味を説明しただけで、簡単に偏見がなくなるという展開は少々強引。だが、お父さんのパートナーのルーカが警察官で、オートバイに乗ったルーカに会った男の子たちが、お父さんのことでカルロをからかわなくなるのはありそうな気がする。頭で考えるよりも、当事者を個人的に知ることがたいせつなのだ。
 版元のLo Stampatello社は多様な家族を描いた絵本をいくつも出していて、この絵本もそのひとつ。ほかにも、『いろいろ いろんな かぞくの ほん』(メアリ・ホフマン文/ロス・アスクィス絵/杉本詠美訳/少年写真新聞社)のイタリア語版などを刊行している。

出版社の作品紹介ページ

Non piangere, non ridere, non giocare

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"Non piangere, non ridere, non giocare"
『泣くな、笑うな、遊ぶな』(仮題)
Autrice: Vanna Cercenà
Lapis 2014, 138 pp
ISBN: 978- 8878743243
★2015年 チェント賞 小学生向け部門 1位

 今から半世紀前の1970年。テレーザの母アンナは、父が亡くなってから、季節労働者としてスイスに働きにいっている。テレーザは祖母とふたりで故郷の町に残っていたが、年老いた祖母がテレーザの世話を続けるのが難しくなり、施設に入ったため、テレーザは母とともにスイスに渡る。
 季節労働者が家族を連れてくることは禁じられており、テレーザがいることは内緒だった。そのため、学校に通うどころか、母が仕事でいない昼間は、狭いアパートの屋根裏部屋の部屋から出ることすらできない。一度、母に連れられて外に出てみたが、誰もが秘密警察のように思えて、不法滞在者であることを密告されるのではないかと怖くてたまらなかった。
 窓から猫が迷い込んできたことから、猫を探して屋根伝いにやってきた、飼い主の少年パウルと出会う。パウルの母はイタリア語を話し、パウルもイタリア語が堪能だった。仲よくなったふたりは、毎週土曜日に一緒に遊ぶようになる。パウルが屋根伝いにテレーザのアパートまで迎えにきて、そのまま屋根伝いにパウルの家まで行く。最初は家のなかで一緒に凧を作っていたが、外に出て作った凧を上げたり、パウルがサッカーをするのをほかの子と一緒に観戦したりして、ほかの子どもたちとも知り合う。テレーザはどんどん明るく元気になっていき、テレーザの母もその変化に気づく。
 ある日、屋根の上から隣の家の庭を眺めていたテレーザとパウルは、隣人が犬をケージに閉じ込めていることを知る。ひどい扱いをしていることから、その家の飼い犬だとは思えず、助け出して、飼い主の元に返そうとしたことから、事態は思わぬ方向へ流れていく。
 作者が物語の舞台を1970年にしたのは、この年にスイス人人口に対する外国人の割合を10%に制限すべきかどうか是非を問う、国民投票が行われたからだろう。クライマックスで国民投票の日を迎え、可決されればスイスにいられなくなってしまうため、テレーザの母は不安な面持ちで投票結果を待つ。
 かつてイタリアは移民を送りだす国で、職を求めてドイツやフランスなどに季節労働者として働きにいく人は少なくなかった。現代のイタリアでは、アフリカなどから流れ込む移民が問題になっている。だが、出ていく移民の数と入ってくる移民の数が逆転したのは1970年台半ばで、そう遠い昔ではない。遠い異国からボートで流れ着いた人たちは、半世紀前の自分たちなのだ。

やまねこ翻訳クラブ チェント賞 受賞作品リスト

Tre casi per l'investigatore Wickson Alieni

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"Tre casi per l'investigatore Wickson Alieni"
『ウィクソン・アリエーニ捜査官 3つの事件』(仮題)
Autore: Luca Doninelli
Bompiani 2018, 160 pp
ISBN: 978- 8845293535
★2019年 ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞 +6部門

 ウィクソン・アリエーニ捜査官にはほかの人にはない特徴がある。それは、これといった特徴がないこと。あまりに普通すぎるので、視界に入らないのだ。誰にも気づかれず、誰にも見られことなく潜入できる。ウィクソン・アリエーニ捜査官がいるおかげで、上司のフランク・フェリッケ警察分署長は、仕事もせずに理髪店に入り浸って、たった1本しかない髪の毛(名前はフィリッポ)の手入れに専念している。
 次々と起きる3つの事件——ロンドンの空から雨雲が盗まれ、ロンドン中の朝食からニシンが盗まれ、アフタヌーンティーが盗まれる。その裏にいるのは、イギリス的なものばかり狙う、恐ろしい犯罪者ミルトン・ボビットとその一味。ウィクソン・アリエーニが特殊能力を駆使して事件を解決に導くが、なぜか手柄はフェリッケ警察分署長に持っていかれてしまう。
 子どもたちのアイディアから生まれたというだけあって、出てくるのはナンセンスな人たちばかり。ウィクソン・アリエーニ捜査官はとぼけたいい人なんかではない。それなりに毒があり、なめてかかると痛い目に合う。

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やまねこ翻訳クラブ ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞受賞作品リスト

La signorina Euforbia

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"La signorina Euforbia maestra pasticciera"
『ミス・ユーフォルビア お菓子の先生』(仮題)
Autore: Luigi Ballerini
San Paolo 2014, 128pp
ISBN: 978- 8821590900
★2015年 イタリア・アンデルセン賞 読み物 9~12歳対象部門

 マルタは12歳の中学生。母が亡くなったため、中学校教師の父とふたりで暮らしている。夏休みに入る前の日、近所に風変わりな菓子店を見つけた。ショーウィンドウは空っぽ。お菓子はすべてオーダーメイドで、顧客ひとりひとりに合わせて作るとのだという。店主のミス・ユーフォルビアに心を奪われたマルタは、父を説得して、店で行われる1週間のお菓子教室に通うことになった。
 最初、生徒はマルタひとりしかいなかったが、2日目にマッテオという男の子が加わった。マッテオが、問題を起こして落第してしまった父の元教え子だということにマルタは気づくが、何も言わない。
 お店には毎日お客がやってきた。注文した人は何を必要としているのか? そのためにはどんな材料を使ってどんなお菓子を作ればいいのか? ミス・ユーフォルビアはそのたび真剣に考える。たとえば、落ち込んでいる息子を励ましたいという注文には、抗うつ効果のあるチョコレートや頭をすっきりさせるミントなどの入った「落ち込んでいないで、解決策を見つけよう」という名前のお菓子を作った。ミス・ユーフォルビアに教わりながら、マルタとマッテオも手伝い、ときにはアイディアを出す。
 ミス・ユーフォルビアの指導の下、マルタとマッテオはお菓子づくりの基礎を学ぶだけでなく、お菓子を注文する人たちが本当に必要としているのは何か、じっくり考えるようになった。1週間は瞬く間にすぎていき、二人がすっかり仲よくなるころ、店の立ち退き問題でミス・ユーフォルビアが悩んでいることを知る。
 ミス・ユーフォルビアはマルタとマッテオを子どもだからといってばかにすることも、命令口調になることもない。大人と接するのと変わらぬ態度で接してくれて、マルタはそれが心地いい。マルタもマッテオもそれぞれ問題を抱えているのだが、お互いの存在とミス・ユーフォルビアという、親でも教師でもない大人との付き合いを通して乗り越えていく。

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Fuori fuoco

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"Fuori fuoco"
『フォーカスの外』(仮題)
Autrice: Chiara Carminati
Bompiani 2014, 208pp
ISBN: 978-8845272592
★2015年 イタリア・アンデルセン賞 審査員特別賞
★2016年 ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞 +11部門

 ヨランダは13歳の少女。両親、2人の兄とともにオーストリアに出稼ぎに行っていたが、第一次大戦が勃発したため、3年ぶりに故郷、北イタリア・ウーディネ近郊の村に戻った。幼すぎて出稼ぎ先に連れていくことができず、隣人に預けていた妹のマファルダと再会し、すっかり大きくなったマファルダの姿に目を細める。
 仕事がない男たちは、しばらくのあいだ村でぶらぶら過ごしていたが、ひとり、またひとりと戦地に向かい、ヨランダの父と二人の兄も旅立っていった。この時点では戦争は長くは続かないだろうと誰もが楽観していた。だが、戦争が終わらないまま3年が過ぎ、ある日、村に駐在する軍人に逆恨みされた母が不当に逮捕され、強制収容所に送られてしまう。
 母に手渡されたメモを頼りに、ヨランダとマファルダはウーディネに住むアデーレおばさんの元に身を寄せる。アデーレおばさんは盲目の老婆で、母の古い知り合いらしかった。ヨランダはアデーレおばさんから、存在していることすら知らなかった母方の祖母のことを尋ねられる。
 本書は第一世界大戦開戦100周年となる年にイタリアで刊行された。それ以前の戦争が遠い戦地で男たちが戦うものだったのに対し、飛行機が普及した結果、戦闘員ではない一般市民までもが空襲による攻撃の対象となったのが第一次世界大戦である。タイトルを直訳すると「ピントはずれ」で、つまり、戦争を、戦地にいる男たちに焦点を合わせるのではなく、その外にいる女性、ヨランダの視点で描いていることを意味する。
 ヨランダたちは空襲から逃れながら、祖母を探して、列車と船を乗り継ぎ、ときには軍人相手にはったりをきかせながら、女性——しかも子どもと老人だけで過酷な旅を続ける。何度も思いがけない体験をして成長していく。ヨランダという少女の成長物語であり(兄の親友との淡いロマンスもある)、同時に、アデーレおばさんやヨランダの祖母といった、手に職を持った女性の自立の物語でもある。

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やまねこ翻訳クラブ ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞受賞作品リスト

Contro corrente

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"Contro corrente"
『流れに逆らって』(仮題)
Autrice: Alice Keller
Illustratrice: Veronica Truttero
Sonnos 2017, 80pp
ISBN: 978-8876093623
★IBBY(国際児童図書評議会)障害児図書資料センター2019年推薦図書

 舞台は20世紀初めのアメリカ。
 エミリーの従姉ガートルードは有名な水泳選手で、ガートルードから水着をプレゼントされたエミリーは、自分もガートルードのように泳げるようになりたいと思っていた。当時、女性が人前で肌を露出して泳ぐのははしたないことだとされ、エミリーの母や姉たちはガートルードのことを白い目で見ていた。エミリーが水泳を習うのはもちろん大反対。けれど、あきらめきれないエミリーは、クラスメートのレオに手伝ってもらって、近くの湖でこっそり泳ぎの練習を始める。
 ガートルードはパリ五輪で金メダルをとったあと、プロになり、ドーヴァー海峡横断に挑戦する。ガートルードに負けじと、エミリーは湖の横断に挑戦する。
 物語はフィクションで、主人公のエミリーは架空の人物だが、従姉のガートルードは女性で初めてドーヴァー海峡を横断した、ガートルード・キャロライン・イーダリーがモデル。30代で聴力を完全に失ってからは、耳の不自由な子どもたちに水泳を教えていたという。
 絵本からグラフィックノベルへの橋渡しとなるようなつくりで、黒とオレンジを基調とした色合いは昔の少女漫画の3色カラーを思わせる。
 タイトルは、湖で泳いだエミリーとドーヴァー海峡横断に挑戦したガートルードの、文字通り「水の流れに逆らって」という意味でもあり、女性が肌を露出することを批判された時代に、白い目に耐えながら水泳を続けたふたりの「大勢に抵抗して」という意味でもある。

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La pioggia porterà le violette di maggio

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"La pioggia porterà le violette di maggio"
『雨が降れば5月にスミレの花が咲く』(仮題)
Autore: Matteo Corradini
Lapis 2017, 113pp
ISBN: 978-8878745438

 クララの好きなものはクラリネットとボーイフレンドのサムエル。10歳の誕生日に、古道具屋で見つけたという古いクラリネットを両親からプレゼントされた。90年くらい前に作られたものだという。
 サムエルからもらったバースデーカードの隠し場所を探していて、クララはクラリネットのケースのなかに黄ばんだ手紙があるのを見つけた。サムエルという男性からクララという女性へのラブレター。自分と同じクララという名前の女性にサムエルと同じ名前の男性がラブレターを送っていることに興味をもち、このクララという女性が誰なのか調べようと決める。
 兄のパヴェルとそのバンド仲間の車に乗せてもらって、クララは両親がクラリネットを買った古道具屋を訪ねる。さらに、古道具屋にクラリネットを売ったロシア人、パンと交換にロシア人にクラリネットを譲ったユダヤ人の少年、手作りのおもちゃのトラックとクラリネットを交換したユダヤ人の男性、その弟……。クラリネットに関係した人物をひとりひとり訪ねながら、最初の持ち主に少しずつ近づいていく。最後に行き着いたのは、第二次大戦中にナチス・ドイツがテレジーンに置いていたユダヤ人ゲットー。そこでかつて何が行われていたか、クララとサムエルはどうなったかを知るのだが……。
 物語の舞台はチェコ。作者はイタリア人だが、ヘブライ学者で、ホロコーストに関する調査・研究を行っている。
 タイトルはベニー・グッドマンの “Don't Be That Way” の歌詞より。クララが見つけたサムエルからクララへの手紙に引用されている。

L'estate che conobbi il Che

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"L'estate che conobbi il Che"
『チェ・ゲバラを知った夏』(仮題)
Autore: Luigi Garlando
Rizzoli 2015, 179pp
ISBN: 978-8817080040
★2017年 ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞 +11部門
★2016年 IBBYオナーリスト

 2014年夏。チェーザレの関心はW杯ブラジル大会でイタリアが活躍することだけ……のはずだった。
 チェーザレは、家具製造会社の代表取締役の父さん、有名な外科医の母さん、経済学を学ぶ大学生でファッションブロガーの姉さん4人で郊外の15部屋あるプール付きの邸宅で何不自由なく暮らしていた。丘の向こうには家具職人だったおじいちゃん(父さんの父さん)が住んでいる。父さんとおじいちゃんには何か確執があってほとんど顔を合わせなかったが、チェーザレはしょっちゅうおじいちゃんに会いにいっていた。
 夏休み初日に迎えたチェーザレの12歳の誕生日パーティーには学校のクラスメートだけでなく、近隣に住む同年代の男の子たちを大勢招待していた。けれど、パーティーには数人しか来なかった。親友のレオが来てくれたので気にしないことにしたが、おじいちゃんが現れないのは気になった。おじいちゃんは毎年誕生日には必ず顔を出してくれて、木で素晴らしいものを作って届けてくれるのに。
 パーティーのあと、自転車でおじいちゃんの家に行ったチェーザレはおじいちゃんが救急車で運ばれるところを目撃する。おじいちゃんの肩にひげを生やした男のタトゥーがあることに気づいた。最初、イエス・キリストの肖像画かと思ったが、調べてみて、チェ・ゲバラという人物だと知る。でも、チェ・ゲバラでとは?
 おじいちゃんは幸い一命を取りとめたが、しばらく入院することになった。チェーザレは家族に内緒で毎日おじいちゃんに会いに病院まで行き、おじいちゃんはチェーザレにチェ・ゲバラの生涯について話してくれる。アルゼンチンの裕福な家庭に生まれ、医者をめざしていたチェ・ゲバラが、なぜ革命を志すことになったのか……?
 一方、近年、北欧の家具メーカーに押されて、お父さんの会社は業績が落ちていた。近隣の子どもたちの親はほとんど、チェーザレのお父さんの会社に勤めている。大幅なリストラが続いていることに腹を立て、自分の子どもたちを誕生日パーティーに行かせなかったのだった。家に長く勤める庭師の息子も解雇され、抗議のハンガーストライキを始めた。
 イタリアの経済不況がチェーザレの生活に暗い影を落とし、おじいちゃんは病に倒れ、楽しみしていたW杯ブラジル大会でイタリアはまさかの一次リーグ敗退してしまうという散々な夏。しかし、そんななか、おじいちゃんを通してチェ・ゲバラという人物を知ったことで、チェーザレは自分以外の人たちの生活に目を向けられるようになる。ちぎれるような痛みと引き換えに子ども時代に別れを告げる、ひと夏の成長物語である。


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やまねこ翻訳クラブ ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞受賞作品リスト

Lora e io

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"Lora e io"
『ロラとわたし』(仮題)
Autrice: Chiara Valentina Segré
Illustratore: Paolo Domeniconi
Camelozampa 2012, 32pp
ISBN: 978-8896323052
★IBBY(国際児童図書評議会)障害児図書資料センター2015年推薦図書

 ロラはわたしのいちばんのともだち。
 こうえんのまえにある すてきなアパートで
 いっしょにくらしています。


 ラブラドール・レトリバーとその友だちである若い女性と日々の生活が淡々とつづられます。公園で散歩をして、おいしいものを食べたり、市場で買い物をしたり、土曜の夜に映画を見たり、海岸まで小旅行をしたり……。食べ物や音楽の好みがちがうので、ときにはけんかをすることもあるけれど。
 実は女性は大人になってから視力を失った視覚障害者で、黒いラブラドール・レトリーバーはそのパートナーなのですが、ハーネスをつけていないので、盲導犬であることは最後までわかりません。盲導犬を理解するため、あるいは視覚障害者の生活を理解するための絵本というよりは、犬と人間の友情を描いた絵本として楽しみたいと思います。
 絵が美しく、思わず引き込まれます。見開き2ページの絵から物語が聞こえてきます。

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※動画による作品紹介あり。

【追記】
『ローラとわたし』(杉本あり訳/徳間書店/2018年01月)

La maglia del nonno

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"La maglia del nonno"
『おじいちゃんのユニフォーム』(仮題)
Autrice: Gabriella Genisi
Illustratrice: Eleonora Marton
Biancoenero Edizioni 2012, 32pp
ISBN: 978-8889921654
★IBBY(国際児童図書評議会)障害児図書資料センター2015年推薦図書

 おじいちゃんは昔はラジオでサッカーの実況中継をしていて、イタリア中の人たちがおじいちゃんのことを知っていた。おじいちゃんの部屋には今でもサッカー選手のユニフォームがいっぱい飾ってあって、イグナツィオはおじいちゃんもおじいちゃんの部屋も大好きだ。
 忙しいお父さん・お母さんに代わって、おじいちゃんが毎日イグナツィオを学校まで迎えにきてくれる。ある雨の日、いつものようにおじいちゃんと一緒に家に帰ろうとしていて、おじいちゃんは道がわからなくなってしまった。雨が降っていたせいだと思っていたけれど、少しずつおかしな言動が増えていく。イグナツィオは心配になって、お父さん・お母さんに相談する。
 アルツハイマー型認知症を発症したおじいちゃんの姿を孫の男の子の視点で描いている。最初は戸惑うが、少しずつ子どもみたいになっていくおじいちゃんを受け入れる。おじいちゃんのモデルはイタリアで有名なジャーナリストで、ラジオのサッカー中継で人気を集めたイグナツィオ・スキーノ氏(アルツハイマー型認知症を患った後、2008年に死去)。
 本書は「ディスレクシアに配慮している本」として2015年IBBY障害児図書資料センター推薦図書に選ばれた。あいまいな表現を避けるなど、文章や語彙に気をつかっているほか、パラグラフを短くして行間を空け、リズミカルに読めるように文章の長さ(文末の位置)を不揃いにし、読みやすいフォントを採用し、目が疲れないようにクリーム色の紙を使用している。

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